いらっしゃいませ。
川崎、元住吉のBARハイドアウトマティーニです。
『シェリー』はスペイン、アンダルシア州周辺で作られる酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)の一種。
日本ではシェリー酒と呼ばれたりもしますが、スペインでは『ヴィノ・デ・へレス(へレスのワイン)』と呼ばれています。
大航海時代に初の世界一周したワインとも言われており、使用ブドウ品種が少ないながらも発酵方式と特殊な熟成方式により独特な個性を生み出しています。
なお酒精強化ワインとは何らかの手法で保存性を高めたワイン。
シェリーの他にはポルトガルのポートとマデラ、イタリアのマルサラなどがあります。
シェリーの歴史は紀元前1100年頃のフェニキア人のブドウ栽培のところまで遡りますが、現在のシェリーの産地である『へレス』と言う地域名は当初『ヘラ』と呼ばれておりましたが時代ごとの支配国民の発音の関係で『ヘラ』→『セレット』→『シェリシュ』と真っつぐ行って、しだりにへえって訛りに訛ったところで、最終的さイギリスにで『シェリー Sherry』になったどしゃべらぃでらじゃ。
また
スペイン圏では『ヘレス Jerez』
フランス圏では『ケレス Xerez』
イギリス圏では『シェリー Sherry』
現在の原産地呼称名称の中では『へレス=ケレス=シェリー・イ・マンサニーリャ=サンルーカル・デ・バラメーダ』と一括りにされています。
シェリーの生産地域はへレス周辺の
『へレス・デ・ラ・フロンテ―ラ』
『エル・プエルト・デ・サンタ・マリア』
『サンルーカル・デ・バラメダ』
と言う3地域をメインに生産されており、
土壌も3つに区分けされています。
◆アルバリサ
・・・硫酸カルシウムやシリカを多く含む白い土壌で酵母の働きを阻害する要因が少ない。最も優良な土壌とされる。
◆バッロ
・・・アルバリサに比べ、硫酸カルシウムやシリカの含有量が少なく赤茶色の様な土壌。アルバリサよりも生産量が多い。鉄分が多いため酸化熟成させるタイプに向く。
◆アレナ
・・・3土壌の中で硫酸カルシウムが最も少ない砂質土壌。
ざっくりとシェリーの地域と土壌の説明をしたところで上記の要素もシェリーのタイプや味に影響するのですが、シェリーの要件に重要なキーワードは製法工程にあり、ブドウ品種、搾汁具合、発酵、酒精強化、樽熟成方式などの様々な途中経過を経たうえで最終的に辛口から極甘口までタイプの異なるワインを作り出しております。
順に説明しますと
①ブドウ品種(全て白ブドウ)
◆パロミノ
・・・ドライタイプのシェリーワインに使用され、全ブドウ品種の95%を占める。特徴的な香りや味が乏しいがゆえに発酵と熟成による個性を邪魔しない。
◆ペドロヒメネス
・・・リースリングに近い品種とされ、同名の極甘口シェリーに使用される。
◆モスカテル
・・・ペドロヒメネス同様に同名の極甘口シェリーに使用される。全ブドウ品種の1%程度。
②搾汁
(1)パロミノの場合は1番~3番まで搾汁し、シェリー用、ビネガー用、蒸留酒用に分類。
(2)ペドロヒメネスとモスカテルの場合は天日干しにして糖分を濃縮してから搾汁。
③発酵と酒精強化
(1)パロミノの場合
特定の条件で『フロール』と言う膜を張る、産膜酵母と言う特殊な酵母を使用して発酵します。アルコール中でのフロールの活動は15%で活性化し17%で失活してしまいますが、フロールを生かすか殺すかでその後のシェリーのタイプが分類されます。
(2)ペドロヒメネスとモスカテルの場合
普通に発酵させますが発酵途中にブランデーを補強し糖濃度を残した状態で発酵停止。
④主なシェリーのタイプとソブレタブラ
酒精強化が終わったところで以下のタイプに分類され、それぞれのタイプごとにソブレタブラ(シェリーになる前段階の樽)で熟成されます。
◆フィノ
・・・英語で言うファインと同義でクリアでドライなシェリー。発酵の段階でフロールの影響を受けたもの。アーモンドやパン生地の様なフレーバーが特徴。一般的に3~7年程度熟成。
◆マンサニージャ
・・・フィノと並びドライなシェリー。海寄りのサンルーカルで作られる為、塩気のあるフィノと言ったイメージ。ただ歴史的にはフィノより古くフィノがへレスに於けるマンサニージャとも形容できます。
◆アモンティリャード
・・・フロールによる酵母発酵を経た上で第二段階に酸化発酵したもの。名称は『モンティージャに似た』とある様に、シェリーとは別の産地のモンティージャに由来。
◆オロロソ
・・・フロールの影響を受けず酸化発酵のみで作られるシェリー。酸化による琥珀色をしていてフルボディ。スコッチウイスキーの所謂シェリー樽に良く使用されるタイプ。
◆パロ・コルタド
・・・アモンティリャードとオロロソの中間のようなキャラクター。ただ製法的にはフィノになる可能性を持ちつつ結果的にオロロソになったもの。
◆クリーム
・・・ドライシェリーに極甘口シェリーをブレンドしたもの。フィノベースで『ペール・クリーム』、アモンティリャードベースで『ミディアム』、オロロソベースで『クリーム』
◆ペドロヒメネス
・・・天日干しまたは煮詰めたペドロヒメネス種から作られる黒砂糖系極甘口シェリー。
◆モスカテル
・・・天日干ししたモスカテル種から作られるフルーティ系極甘口シェリー。
⑤シェリーとしての樽熟成(ソレラシステム)
先ほど樽熟成したソブレタブラはシェリーになる前段階の樽熟成ですが、そこから先のシェリー独自の樽熟成方式として『エル・システマ・デ・クリアデラ・イ・ソレラ』と言うものがあります。
正式名称だと長いので通称『ソレラシステム』とか『ソレラ』とか呼ばれるものですが、
『ソブレタブラ』→『最終クリアデラ』→『第二クリアデラ』→『第一クリアデラ』→『ソレラ』→『ボトリング』
と言う流れで継ぎ足し補充の運用を言います。
ちなみに樽の寿命がおおよそ50年くらいと言われており基本ソレラシステムの樽は空くことが無いため、ウイスキーのシェリー樽が希少なのはその為です。
なおソレラシステムが確立されたのは定かではないものの18世紀半ば頃と言う説があり、それ以前はシェリーはソレラに組み込まれる前の樽ごとヴィンテージで出荷されていましたのでウイスキーの熟成にも扱いやすかったと言う事になります。
そんなわけで基本シェリーは複数ヴィンテージのものを継ぎ足すので単一ヴィンテージのものはありませんが、現在では限定でヴィンテージのシェリーをリリースしている事もあるようです。
⑥熟成期間
シェリーを名乗るためには最低3年の熟成規制がありますが、特定のタイプ(アモンティリャード、オロロソ、パロコルタド、ペドロヒメネス、クリーム)に関して長期熟成の認定制度があります。
◆VOS
・・・熟成年数20年以上。
ヴィノム・オプティマム・シグナトゥム(最高のものとして選ばれたワイン)の略。
◆VORS
・・・熟成年数30年以上。
ヴィノム・オプティマム・レア・シグナトゥム(最高のものとして選ばれた希少なワイン)の略。
英語のベリー・オールド・シェリーやベリー・オールド・レア・シェリーと意味は異なりますが、高級と言うニュアンスとしては大体近いかと思います。
ひとえにシェリーと言ってもタイプによって味が全く異なります。
フィノやマンサニージャはナッツやパン生地の様なニュアンスが異色であったり、オロロソやアモンティリャードについては紹興酒のようであったり、クリームシェリーはリキュールのようであり、極甘口系はシロップの様な印象を受けるかもしれません。
個性的なカテゴリーなので一般的な白ワインと思って飲むと違和感を感じるとは思いますが、ウイスキーファンの方は樽熟成の要素としても知っておいて損はありませんし、ウイスキー関係なしにシェリーと言うカテゴリーとして捉えれば単体でもカクテルでも面白いかと思います。
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