モスコー・ミュール ~自家製ジンジャービア~


いらっしゃいませ。
川崎、元住吉のBARハイドアウトマティーニです。

モスコーミュールが甘口のカクテルであると認識している人が多いようです。
モスコーミュールは居酒屋メニューと思われていると言う点もその要因かと思いますが、このカクテルもBARでは定番。
なので、普段モスコーミュールを良く飲むからこそBARではどんな風になるのか。
そもそもモスコーミュールを飲んだことが無い人も是非試して欲しいものです。
『モスコー・ミュール=モスクワのラバ=ラバに蹴っ飛ばされるくらい効くという意味』と言う程に、実は結構辛口のカクテルであります。
レシピはスミノフウォッカにライムを加えジンジャービア(ジンジャーエールとは別物)で割り、銅製のマグカップで作られるものがオリジナルのレシピと言われています。

ちなみにジンジャービア(ビア=ビールと言ってもノンアルコール)の起源はイギリス。生姜と糖分を加えた水にイーストを加えて発酵させて作られたものなので、発酵過程で糖分は酵母の養分となる為に甘さは少なくショウガの味がダイレクトに来ますが、ジンジャーエールはショウガ以外にもシナモンやナツメグと言ったスパイスが入り発酵をさせないもの。
ジンジャーエールの正確な歴史が調べても良く分からないので、推測としてまとめると多分アメリカの薬屋で外科医のトーマス・カントレルがジンジャービアを模倣してショウガ以外にスパイスを配合したゴールデンジンジャーエールとして発明。発酵させないので甘さが残る。その後カナダの科学者で薬剤師のジョン・マクローリンが炭酸水にジンジャースパイスフレーバーを加え、甘さを抑えたものとしてカナダドライジンジャーエールが発明され人気が移る。
当時ゴールデンよりも甘くないと言う意味でドライと言う名称を付けたもの。
また、現在ウイルキンソンが出しているものはスタンダードが英国風のハードな辛口(多分昔のゴールデンスタイルとジンジャービアの中間あたりを意識している?)と、ドライジンジャーは北米風のマイルドな甘口としてリリースされており、実際現行のカナダドライジンジャーエールが甘口なのは流行から甘口に移行していったのかも知れません。
勝手にまとめた推測なので真相は分かりませんが、この先の説明の為に必要だったので参考まで。

少し以前。ほんの10年程前では、モスコーミュールと言うとカナダドライの甘口のものを使用するレシピがほとんどで、少しこだわった店だと辛口ジンジャーエールを使用するケースが多かったようです。
当時からジンジャービアはあまり出回っておらず(出ても終売になってしまったり、コストが高かったり)、自家製でジンジャービアを作って使用しているBARが少数あった程度なようで、背景には随分昔からジンジャービア→ゴールデンジンジャーエール→カナダドライジンジャーエールに人気がシフトした経緯があった様に思います。
ただジンジャーエール単体でジュースとして飲むのならカナダドライが飲みやすいですが、アルコールに併せると甘すぎてしまう為、辛口の方がBARのアイテムに向いていると言った事もあるかのように感じます。

現在ではジンジャービアも市販(と言っても一般消費者向けではありませんが)で安定的に入手可能になりましたが、ビアと言いつつも酵母の香りや風味が乏しく、単なる炭酸入りのショウガジュースの様に思えてならず・・・
で、トニックウォーター同様、『無ければ自分で作る理論』で酵母香も加えたジンジャービアを自家製しております。

前置きが長くなりましたが、ノンアルコールながらもビアと名乗る訳なので、イーストはイーストでも折角だから普通のドライイーストでは面白くありません。
かと言って、本来ジンジャービアを作る様の酵母である『ジンジャービアプラント』は日本では入手困難。
シャンパン酵母と言う考えもありましたが、カナダドライが元々ノンアルコールのシャンパンを意識した造りをしていると言う事もあった事、それにビアと言うくらいなのでビール用の酵母を使用。
ホップのキレを生かすと言うよりも酵母の複雑味と香りを重視したい事とジンジャービアがイギリス発祥と言う事もあり、イングリッシュエール用のイーストを使用し発酵させたジンジャービア。
そこに組み合わせてホップ感を出す為には、サンフランシスコのアメリカンクラフトビールの教科書と言われるアンカー社が手掛けるホップ入りウォッカを併せる事で、クラフトビールを思わせる仕上がりにしております。

また、ある程度冷やしはしますが香りを重視するべくグラスは銅製ワインカップに置き換え、氷は入れておりません。

アメリカ産ウォッカを使用している時点で『モスコー・ミュール』ではなくなりますが(最早『サンフランシスコ・ミュール?』)、細かい事は気にしません。旨ければそれで良いのです。
伝統だの正統だのに、いつまでも支配されて執着していては何も始まりません。
マティーニにしても本当に100年200年前のレシピをそのまま再現すると温くて甘いものになってしまいますし、もともとマラリア対策と言われるジントニックにしても今の日本でマラリアが流行している訳でもなく、キニーネ入りトニックウォーターと言っても実際にはキナ抽出物としてしか認可が降りないと言った事情もあり、そのレシピが公式的に公開されている訳でもないので厳密な完全再現は不可能と言えます。
旨いものを作る為に古きを遡る事もあれば新しきを追求する事もある。
仮にその中で多少の勘違いがあったとしても、それで良いのではないかと考えます。

The Bar Hideout Martini ~ザ・バー・ハイドアウト・マティーニ~

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