テキーラについて


いらっしゃいませ。川崎は元住吉のスピークイージー、『ザ・バー・ハイドアウトマティーニ』からテキーラの説明です。

メキシコの蒸留酒である『テキーラ』は、1990年代より100%ブルーアガベで製造される『プレミアム・テキーラ』の区分が制定されてより、アメリカで人気を誇り、ハリウッドの実業家や俳優、セレブ界で大ブームとなり、現在アメリカ西海岸ではより地酒的な『メスカル』にブームが移りつつあります。
メキシコの地酒の『メスカル』の中でもハリスコ州周辺で作られる『テキーラ』がアメリカで発展し、『プレミアム・テキーラ』のブームを経て『メスカル』や『プレミアム・メスカル』にブームが移っていると言う図式の様です。
ただ、日本ではメスカルやテキーラがどうと言う以前に、そもそもテキーラがどれほど洗練されているかと言う事を知っている層がまだ少なく、未だに口の中が焼けるようにアルコールが強い、飲むと悪酔いする粗悪な酒、罰ゲームの酒、と言う認識の方も多いようです。
テキーラを一気飲みして飲食店を出入り禁止になったり急性アルコール中毒で病院送りになったりする事があるのは、飲み手にせよ売り手にせよ扱う側のモラルが無いだけの話で、テキーラ自体には何ら問題ありません。
少なくとも当店ではテキーラも世界に数あるアルコールの一つとして認識して扱っており、正しく飲めば二日酔いにもなりにくく、むしろ初めて蒸留酒を試される方の他、アルコールに弱い方に特にお勧めしておりますので、このブログを読んだ人がテキーラの認識と酒の飲み方のモラルについて間違った方向に進まないように、以下に説明をしていこうと思います。


【原産地呼称】
テキーラは『テキーラ規制委員会(CRT)』により規格基準が守られています。
例えるならば、スパークリングワインの中でもフランスのシャンパーニュ地方でAOCによる特定の製造方法の基準を満たしたものがシャンパーニュを名乗れると言うイメージになり、テキーラとメスカルについては別々の原産地呼称で統制されておりますが、内容は以下のようなものとなっております。

≪テキーラ原産地呼称≫
⓵ブルー・アガベと言う種類のリュウゼツランを51%以上使用しなくてはならない。(⋆ブルーアガベ以外のリュウゼツランやサトウキビ由来の蒸留酒を混合させたものを『ミクスト・テキーラ』、100%ブルーアガベを使用したものを『100%ブルーアガベテキーラ(プレミアム・テキーラ)』と呼ぶ。)
⓶栽培地域はテキーラ5州(ハリスコ州、グアナファト州、タマウリパス州、ミチョアカン州、ナヤリ州)に特定されている。
⓷蒸留については、テキーラ地区とその周辺で蒸留されたものである事。
⓸最低2回の蒸留を行う事。
⓹メチルアルコール含有量は3mg/1ml以下である事。
⓺アルコール度数は35%~55%の間である事。
⓻水以外に加える添加成分は1%以下に抑えなくてはならない。
⓼樽熟成による呼び名の規定(ブランコ:非熟成~60日未満、レポサド:最低2カ月以上の樽熟成、アネホ:600ℓ以下のオーク樽で最低1年以上の樽熟成、エクストラアネホ:600ℓ以下のオーク樽で最低3年以上の樽熟成)

以上がテキーラ製造の規則になっています。
また、テキーラの中でも『プレミアム・テキーラ』と呼ばれるものについてはさらに規定があり、100%『アガベ・アスール(ブルー・アガベ』のみに限られ、ハリスコ州または生産現地で瓶詰めしたものであり、ラベルに『100% de Agave』の表記をしなくてはならない。と言った規則があります。

≪メスカル原産地呼称≫
⓵使用するアガベの種類は、『エスパディン』と言う種類のアガベを中心に、その他47種類。
⓶特定地域は、オアハカ州、ゲレロ州、グアナファト州、サン・ルイス・ポトシ州、サカテカス州、コロラド州デュランゴ、タマウリパス州
⓷球根の加熱方法がテキーラと異なり『蒸し焼き』で処理することで、独特のスモーキーフレーバーを持っている。

他にもチワワ州の『ソトル』、ソノラ州の『バカノラ』と言ったものもありますが、リュウゼツランの蒸留酒にも色々あると言う事になります。

【テロワール】
◆バジェス地方・・・グアダラハラから60km西、標高1200mの谷間地帯で火山灰地質、繊維の多い若いアガベを使用する傾向があり、青々とした辛口のテキーラが多い。
◆ロスアルトス地方・・・グアダラハラから120km東、標高2000mの高地で鉄分を多く含んだ肥沃な赤土地質、糖分の多い長期栽培のアガベを使用する傾向があり、スムースでマイルドなテキーラが多い。
【製法】
原料・・・『アガベ・アスール』と言う種類のリュウゼツランの球根部分(*サボテンとは別物)
栽培・・・海抜600~1800m、年間250日以上の晴天、年間平均気温20度以上と言う栽培条件を満たさなければならない。また、アガベ・アスールの純血を保持するために、株分けで異種交配しないように管理しており、テキーラを製造するに足りる大きさまで生育するには5年~10年の期間を要する。
球根の処理・・・アガベのデンプン質を糖質に変換する為に『蒸し』による加熱を行う
搾汁⇒発酵⇒蒸留⇒樽熟成(熟成しないものもある)⇒瓶詰
【プルケ、メスカル、テキーラの歴史】
メキシコでは紀元前~西暦200年頃から『プルケ』と言うリュウゼツランの絞り汁を発酵させた醸造酒が飲まれていました。それが15世紀~17世紀頃にコンキスタドールがブランデー造りを目的に持ち込んだ蒸留器を使ってプルケを蒸留しようとして完成したものが『メスカル』と言われています。
1758年には最古のテキーラ蒸留所と言われるクエルボ蒸留所から原産地証明などの書類が発見され、18世紀頃にはメスカルの中でも『アガベアスール』と言う種類のリュウゼツランを使用したテキーラ地区のメスカルが特別扱いされていた事が伺え、20世紀に入ると原産地呼称制度や統制委員会が設立され現在に至ります。

このように、テキーラには製造のこだわりと歴史があります。
ワインにせよウイスキーにせよ何事もブームになると、今度はそのブームに乗る事、どんな高いものを飲んだ経験がある、どれほど知識を持っているかがステータスとなってしまい、味そのものや酒を楽しむ行為自体はそっちのけになる場合があります。それはそれで考えものですが、このブログでテキーラやメスカルに興味を持った方は是非お試しください。

 The Bar Hideout Martini ~ザ・バー・ハイドアウト・マティーニ~

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